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  1. 脳科学の進歩と生命倫理 ~最先端医療とどう向き合うか~

スタッフブログ

スタッフブログ 2026.08.26
脳科学の進歩と生命倫理 ~最先端医療とどう向き合うか~

 いつもスタッフブログをお読みいただき、誠にありがとうございます。

 

 日頃から医療関連のニュースに目を通している中で、最近特に印象に残る話題が二つありました。今回は、その二つのニュースを通して、医療の進歩と生命倫理について考えてみたいと思います。

 

1. 脳はなぜ「嫌い」を感じるのか? 「好き嫌いを生み出す脳の仕組み」
 皆さんは日常の中で、「どうしても苦手な人を、簡単に好きになれたらいいのに」と考えたり、逆に「自分を嫌っている人が、好きになってくれるような魔法があれば…」などと想像したことはありませんか? もしそのようなことができたら人間関係の悩みは減るかもしれません。しかし、よく考えてみると、他人の感情を自由に書き換えてしまうなんて、恐ろしくもありますよね。
 そんな「好き嫌いの感情が変化する仕組み」について、興味深い研究成果が報告されました。東京大学の奥山輝大教授らの研究グループは、マウスを用いた実験で、記憶をつかさどる「海馬」と感情を担う「扁桃体」を結ぶ神経回路に着目しました。研究では、この接続が強まることで「親しい相手を避けるようになる(嫌いになる)仕組み」が明らかになりました(2026年7月、米科学誌『Science』掲載)。この回路の働きを抑えると、相手を避ける行動が消えることも確認されました。
 もちろん、この研究は「人の好き嫌いを人工的に操作する」ためのものではありません。うつ病や社交不安症(SAD)といった精神疾患において、脳内でどのような回路が過剰に働いているのかを解明することで、将来的な治療法の開発につながると期待されています。私たちの「心」の仕組みが分子レベルで少しずつ解明されつつあることは、医療の大きな一歩と言えるでしょう。

 

2. 最先端医療が突きつける「生命倫理」の課題とは?
 脳科学やゲノム編集など、医療技術は目覚ましい進歩を遂げています。しかし、その進歩が大きいほど、倫理や安全性についても慎重な議論が求められます。
 医療のあり方を改めて考えさせられるニュースもありました。中国において、次世代のゲノム編集技術(塩基編集)を用いた世界初の脳治療が行われました。しかし、これを受けた6歳の少女が、投与からわずか7日後に合併症で死亡していたことが判明しました。少女が患っていたのは「スナイダース・ブロック=カンポー症候群」という非常に珍しい神経発達障害です。
 この事例で特に問われているのは、医療倫理のあり方です。この疾患には、確立された根治療法はないものの、直ちに命に関わる疾患ではありませんでした。それにもかかわらず、安全性の検証やご家族へのリスク説明が不十分なまま、結果として「安全性が十分に確認されていない治療」が行われてしまったのです。加えて、この死亡事故は1年以上公にされず、事前に行った動物実験の有効性を示す論文だけが発表されていました。
 医療技術は日々めざましく発展しており、多くの患者さんに新たな治療の可能性をもたらしています。一方で、その技術を患者さんの本当の利益につなげるためには、安全性や倫理への十分な配慮が欠かせません。「医療の進歩」と「生命倫理」は決して切り離せないテーマであり、今後もその両立について考え続けることが大切ではないでしょうか。

 

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。


【参考文献・出典】
• サイエンスポータル(JST)
『親しい相手を嫌いになる脳の仕組みをマウスで解明 東大、人間関係理解へ前進』(内城喜貴 氏、2026年7月16日)
https://scienceportal.jst.go.jp/stories/20260716_s01/
• JBpress(ジェイビープレス)
『世界初の脳ゲノム編集で6歳少女が死亡、なぜその死は伏せられたのか?中国ゲノム編集治療が露呈した研究倫理の空白』(粥川準二 氏、2026年8月4日)
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/96276
• ITmedia NEWS
『脳の遺伝子編集治療で6歳女児死亡 1年以上公表されず 約1億3000万円は両親が負担 中国』(山下裕毅 氏、2026年8月3日)
https://www.itmedia.co.jp/news/article/2608/03/2000000300/

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