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  1. 舌の記憶

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スタッフブログ 2021.10.13
舌の記憶

 小学生の頃田んぼの中の一軒家に住んでいた私は冬になると周囲の悪ガキと同様勢いよく青洟を垂らしていた。袖口のテカテカになった服で稲刈りの終わった田んぼを走り回る。ぼろ布を丸めたボールとその辺に落ちていた棒切れで三角ベースをして遊んでいた。
 医者にかかることはめったになかったが、咳があまり酷いときには母親が街なかの小児科に連れて行ってくれた。
 古い木造の建物に入るとクレゾールの独特の匂いが漂っている。診察室ではお医者さんの太い指でまず打診をしてそのあと象牙の聴診器で診察。背中を聴診されるとくすぐったかった。診察が終わって待合室で待っていると小さな窓から薬を渡してくれる。薬包紙で包んだ粉薬と水薬だ。水薬の容器はガラスでできており、蓋はプラスチックだった。この水薬が私は好きだった。甘い香りで果物のように美味しく、母親にたくさん飲みたいと言っても決まった目盛りまでしか飲ませてくれなかった。
 それから10年以上経って大学生の時、中華料理を大勢で食べていた時に杏仁豆腐がデザートに出てきた。それを口にした瞬間あの水薬と同じ香りがしてびっくりした。なぜあの水薬と同じ香りがするのか不思議に思ったが、それ以上は調べようがなかった。

 
 さて医者になってからのことだが、小児科の先生の処方の中にキョウニン水というのを見つけた。薬らしからぬ名前だと思い、薬剤師の方にお願いして香りを嗅がせてもらうとあの水薬と同じ香りだった。
あんず(Prunus armeniaca)の種を乾燥させて割り、その中身(仁)を菓子に仕上げたのが杏仁豆腐で、蒸留して精製したのがキョウニン水だそうだ。同じ香りがするのも当たり前であった。ちなみにアーモンドも近縁種で同じ香りがする。
 風邪をひいたときに杏仁豆腐が咳止めとして効くかどうかは不明である。あと、キョウニン水は現在では副作用が出やすいので小児には投与を避けることと添付文書には書かれてある。

 
 最後までお読みいただきありがとうございました。

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