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  1. くそじじい

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スタッフブログ 2022.11.23
くそじじい

「じじい」という言葉がある。
小さな子供が近所の年寄りに怒られたときに言ったりする。
辞書にはお年寄りの蔑称とある。
おそらくこの文をお読みになっている方は使ったことも無いだろう。
「くそじじい」となるともっと悪い。
そんな「くそじじい」の話である。

 

 平成4年頃役所が週休二日制となった。 当時在籍していた○○医大も土曜が休みとなる。其のころフランス語を勉強していた私はお茶の水にあるアテネフランセという学校に通うことにした。 
 午前中は会話のクラスで生徒は10人ほど。 老若男女入り混じった教室でなかなか思うようにならない仏語にみんな悪戦苦闘する。 中に70歳くらいの総白髪の男性がいた。 いつも一番前の席に座り片方の耳の聞こえが悪いのか首を傾げてノートをとっている。 先生から何か聞かれたときに自分に都合の悪いことだったりすると聞こえないふりをする。そのくせ悪口を小声で言ったりするとちゃんと聞こえている。 肝心な質問には機転を利かせた答えを的確に返す。 いつしかみんなから尊敬と愛情を込めて「くそじじい」と呼ばれるようになった。

 

 Y先生のご指導よろしく時々皆で飲みに行くようになった。 そんなある日「くそじじい」の名を不動にする出来事があった。 長野の学会に参加した自分は松茸を手土産に飲み会に参加した。 店の人に松茸を渡すと暫くして焼き松茸を細かく裂いた皿が運ばれてきた。
 するとくだんの老人、「おっ!松茸か!わしゃこれが好物じゃ」と言ったかと思うと箸でササーっと集めて独り占めする勢いでがぶりと食べた。 「こらー!このくそじじい!」ほぼみんな同時に大きな声で叫んだが本人はどこ吹く風でニコニコしながらもぐもぐ食べている。 その場が大いに盛り上がった。

 

 「おっ!○○君、食べに行くぞ」 午前のクラスが終わったときに「くそじじい」と二人で食べに行くようになった。 学校の近所にある出版社の中にある喫茶店でビールを飲みながら昼食。 「退職する前はどこで仕事をしていたんですか?」「おっ、わしはな、○○医科大学というところで仕事をしとった」「・・・・・」 日本も狭いものだと思いながら大学に戻って昔の職員名簿を引っ張り出した。 「くそじじい」の名を理事会のメンバーの中に見つけた。 それからも「くそじじい」と呼ぶかどうかちょっと悩んだがいつまでたっても「くそじじい」は「くそじじい」だった。

 

 数年して彼は死んだ。 だがクラスのメンバーで飲みに行ってもいつも話題の中心は「くそじじい」だ。 あんなに愛されたじじいは世の中にはいない。

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